3日間ダラブッカが続きましたので、ここでトンバクを紹介しようと思います。
私が最もしびれるパーカッショニスト、モハンマド・レザー・モルタザヴィーです。
木をくりぬいた胴体に、ただ皮が1枚張ってあるだけです。
ただ皮が張ってあるだけなんです。
それなのに、この表現力はいったい何なのか。
本当に我々は太鼓の演奏を聴いているのか。
この動画を初めて見たとき、本当に中東打楽器の可能性を確信しました。
ここまでできるのかと。しかもたった一人で。
私はもともとあまり演奏仲間がいないもので、一人でどこまでできるかということを
ずっと考えていたんですが、この動画はなんというか、勇気づけられました。
ダラブッカも相当多彩な表現ができる楽器ですが、
トンバクはさらにその上を行くぐらい、多彩な表現ができる楽器ではないかと思っています。
表現できる感情や雰囲気は違いますから、どっちが優れているという話ではありませんが。
トンバクの場合、かなり精密に音程をコントロールできるうえに、
音のテクスチャを自在に操れるというのが特徴です。もちろん「ただし達人に限る」ですが。
打面を叩くということだけを考えても5種類ぐらい方法がありますし、
音の種類も、低音・中音・高音と出すことができます。
(中音は、ダラブッカのBakとは異なっていて、打面の縁と真ん中の間を叩く音です)
そして、人によっちゃあ胴体の木も叩きます。
もうなんだかとにかく、すげえ楽器です。1回では語りきれません。
トンバクについて詳細に語りだしたら、5時間ぐらいは喋れると思います。
なので、今日はとりあえず、彼の演奏をいくつか紹介して終わることにします。
あと、念のために言いますと、彼のような演奏がトンバクのスタンダードではありません。
ふつうのトンバクはもうちょっとおとなしいですし、控えめな表現をしています。
まあそれでもだいぶ多彩なことには変わりないんですが。
上の演奏も相当すごかったですが、こちらはよりキテます。
前と比較すると割とおとなしめ。なぜか白黒ですが、もちろん今もご存命です。
1979年(ちょうどイラン革命の年ですね)生まれで、イランのテヘラン出身。
2003年ごろから活動の拠点をドイツに移しているようです。
結構、ヨーロッパに移住してるイラン音楽家は多いです。あとアメリカ西海岸にも。
イラン社会と音楽の関係ってのも興味深いんですが、それは現在調査中なので、またいずれ。