Rashid Kakavand

長らくお休みしてすいませんでした。
最近、ペルシアン・ポップス全体がすごく面白いことになってる(と気づいた)ので、
そちらの方ばかり追いかけていた結果、本業である打楽器音楽をおろそかにしてしまいました。
今日は原点に立ち戻って、トンバクの演奏を紹介したいと思います。


ここまで人間は自分の手をコントロールできるのか、というぐらい、
完璧なコントロールぶりです。音にまったくブレがない。
どんな演奏でも自由自在にできるから、音楽的にいくらでも遊べるという、
そんな余裕を感じさせる演奏です。あと顔が哲学者っぽい。

1:00あたりまで、片方の手でずっと一定のビートを刻み続けています。
しかもシングルストロークで。ある意味ダラブッカ的な技法ですが、
ダラブッカ奏者もここまでシングルストローク連打する人はそういません。
Bahman Rajabiがこのスタイルを得意としているので、彼の影響かもと思います。

あと、1:21-1:31あたりとかすごいですよ。
両手でそれぞれ3本の指をフィンガースナップによって打面に打ちつけながら、
そのあいだに片手リズといいますか、4本の指をタイミングをズラして当てることによって
「ザラッ」という音をはさんでいる。しかも右・左・右と交互に。
これはテクニックとしてありえないぐらい難しいと思います。
シングルストローク連打も大変ですが。

2:01-2:23あたりは、右手で一定のリズム(結構難しそうなリズム)をきざみながら、
左手で自在に高音を入れていく、という感じ。
2:49-2:59では、右手で打面をミュートする位置を変えながら叩くことで、
音程を操作するという、これはMohammad Reza Mortazavi的な技術を使っています。

これだけいろんなテクニックを横断的に取り入れた演奏は初めて見ました。
技巧的にはある意味最高峰かもしれません。

あんまりテクニックのことばっかり言ってもアレなので、
音楽的によくできてるなあと思う演奏を紹介します。

これもさっきと同じで、出だしはシングルストロークの連打から始まります。
で、その単調だったビートにだんだん色んなものが入ってくることで、
崩れていくおもしろさというのがありますね。予想外な感じ。

そもそも、この「シングルストロークの連打」があることによって、
「次は何が来るんだろう」という期待感が格段に高まる気がします。
あと、何拍子かよくわからないけど、でも一定のテンポは提示されているという、
きわめて打楽器側に都合のいい状況が作り出せています。

で、その一定のビート上での遊びが終わった段階で、
急にバッと切り替える(1:30)。この切り替え方がうまい。
そして、次から次へと予想外なリズムが繰り出され、何が何だかわかんないうちに、
2:28に、もとのシングルストロークの連打に戻ってくる。
そこで「あー、戻ってきた戻ってきた」という、和音の解決のような安心感があります。
あと、予想外なリズムも、次々と手を変え品を変えリズムを提示していますから、
聴いてて飽きないんですよ。リズムの切れ目はちゃんと分かるので。

にしてもこの演奏でも複雑なテクニックが使われていて、
いったいここまで到達するのにどれだけ練習したんだろう、という気はします。

彼の動画はそんなに載ってなくてですね、ほかはちょっと音質が悪いです。
一応載せてはおきます。


Rashid Kakavand自身については不明な点が多くて、
まず有名なのかそうでもないのかがわからない。
あと年齢がわからない。老けてるといえば老けてるし、意外に若いかもしれない。
Facebookページにも情報が少ない。
あるといえば彼のMyspaceのページぐらいで、そこにもそんなに情報がないですし。
ただ、Myspace上で見られる演奏がこれまたすごいです。
Pezhham Akhavassをほうふつとさせる感じです。見てみてください。

だいぶひさしぶりの更新なんで、書き方を忘れているところがちょっとありますが、
これからもぼちぼちと更新していこうと思います。見守っていただけたら幸いです。

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